東南アジア大陸部の自然資源利用がどのようにおこなわれてきたのかを明らかにするために、過去数十年の土地利用変化を復元し、その変化の過程と要因について研究している。研究対象地域は、ラオス北部の山岳地域に位置する盆地である。 今年度は、地域における低地村と山地村の歴史的関係を、農業生産、および自然産物採集の観点から明らかにした。ラオスでは、これまで低地にすむタイ系民族によるモン・クメール系民族の支配というモデルが提示されてきた。この理由のひとつが、水田と焼畑の農業生産性の違いによるものである。水田をおこなうタイ系民族は、高い農業生産性を背景として、焼畑に従事する山地民を従属させてきたというものである。この従来のモデルに対して、支配一被支配という関係では説明できず、むしろ対等な協力関係が結ばれてきた地域があること、水田と焼畑の生産性に差が大きくない場合にそのような関係が結ばれる可能性が高いこと、低地民と山地民の関係は固定的でなかった可能性があることを指摘した。
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