本研究は、冷戦終結後の欧州地域の旧共産圏、すなわち、旧ソ連・東欧諸国が、どのように政治・経済発展を遂げているか、また紛争を解決して平和構築と安全保障を進めているかを、EUとの関係を鍵にして、比較研究することを目指す。特に黒海地域という地域枠組みや米国ファクターなど国際レベルでの検討にも留意してきた。 当該年度は、調査を予定していた「今後のEU拡大で加盟が想定されているが、紛争・民主化など課題が多い中欧諸国」であるアルバニア、マケドニア、セルビア、モンテネグロのうち、マケドニア、モンテネグロ、コソヴォ(セルビア)において、9月と3月に調査を行った。極めて有意義な出張となり、国際機関、当地の学術研究機関、NGO、研究者、住民などに対するインタビューにより、当地の民主化、経済発展、平和構築の状況を多面的に理解することができた。また、アゼルバイジャンの研究者との共同研究により、比較研究を深めることもできた。 ここ数年の世界の多極化の趨勢は、米国およびロシアという大国の影響力や黒海地域という地域枠組みを薄めてきている一方、EUおよびNATOの旧ソ連・東欧圏における影響力を極めて強めている感がある。この動きは短期的にも変動がみられ、短期的、長期的な分析を行うことで、地域研究ならびに国際政治のダイナミズムを理解することができると感じており、この点は大きな重要性を持つと考える。さらなる分析により大きな意義ある成果を出せると確信している。 研究成果については、年度内に数本の論文にまとめたが、来年度の初夏に単行本の1冊目(本研究の成果として、2冊出版予定)を出版し、秋に米国スラブ学会で発表を行うことが決まっている。
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