研究概要 |
インド西部の農村部では、その余剰労働力を都市部門へシフトさせる際に、農村内の社会関係が足かせになるケースがある。カーストとも強く関連しているが、主に生存リスクの回避をするために地主のもとでの農業労働を継続することが合理的な環境となっている。本研究は、こうした土着制度が、近年のインドにおける経済成長によって如何に変容しているのか、また今後の経済成長にいかなる影響を与えるのかという問題意識をもつ。とりわけ、その普遍性、すなわちそうした土着制度は、どの程度の地理的分布を持って存在しているのかを明らかにする。 これまで1,2,3年目では、半径400キロ圏の約60カ村での実態調査を実施し、土着制度のマップ作りとその精緻化、および近隣都市の経済状況などを加味した土着制度の存在条件の明確化などを行った。 本年度はその成果を、歴史的条件に照らし合わせ、英領期に直接統治をされていた地域で、かつパティダールという農耕カーストが有意性を持つ地域ではほぼ普遍的に上記の土着制度が存在することが確認された。 また、そうした地域とそれ以外の地域において、実際の都市部門への就業経路にいかなる違いが存在するかを調査した。その結果、後者のほうが、戦車に比べてスムーズに都市部門へシフトしていること、移動先までの距離が広範囲であること、また同じ村の出身者同士が移住先の都市部でもコミュニティーを強く形成していることなどが明らかとなった。
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