本研究の目的は、権力機関である人民代表大会と、諮問機関である人民政治協商会議の活動の実態を明らかにすることで、現代中国の政治空間における「議会」(人民代表大会と政治協商会議の総称)の存在位置と機能を検証することにあった。検証作業をつうじて現代中国における「議会」の活動の可能性を明らかにし、「議会」という観点から現代中国政治の変化の方向性を析出することを試みることにある。本年度は、これまで調査、収集してきた人民代表大会誌を利用した文献調査や公文書館に所蔵されている人民代表大会代表や政治協商会議委員が提出する議案・提案・建議、それに対する行政機関の回答に関する資料、および人民代表大会代表や政治協商会議委員の個人に関する資料を利用した研究をおこなった。今年度の研究実績は、(1)人民代表大会代表は選出選挙区や所属集団(企業など)に対する積極的な利益誘導型の行動を採ること、(2)人民代表大会代表は中国共産党に対する政治的な挑戦を意図する行動を採るというよりも、より多くの政治的・経済的資源配分を要求することを目的とした行動を採るのであり、(「議会」が立地する地域における)中央地方関係の調整を意図する行動を採ること、(3)人民代表大会代表は一般的に同一選出選挙区内の代表と行動を共にし、仮に選出選挙区の範囲を越えた行動をとることはほとんどないことなど、中国の地方「議会」代表の行動についてより全面的な理解を深めることができた。これらの研究成果の一部は、日本国際政治学会2009年度全国学術大会で報告や、在中国の現代中国政治研究者に対して早稲田大学現代中国研究所『中国の政治ガバナンス:新しい課題、新しい模索』での報告をつうじて意見交流をおこなったほか(2010年3月)、今後American Political Science Associationの2010年大会において研究成果を発表することになっている。
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