現地調査に基づく農村研究が欠落しているミャンマーにおいて、少数の調査村(現在のところ1ヶ村)を対象にしたフィールドワークを実施している(2007年8月)。選定した調査村は同国の中央部に位置する東南アジアでは希な半乾燥気候地域にある。農・畜・林業生産にとって比較的厳しい自然環境条件を、この地域の農村部住民がいかに取り込んで利用してその生業・生活システムを構築しているのかを明らかにし、農村部の持続的な開発に向けた指針を得ることを目的としている。 現地調査は4年間継続的に実施する予定であり、本年はその初年にあたる。本年の主な調査内容は農村部住民からの聞き取り調査と土地利用概況の踏査であった。農業生態システムの概況把握とそれが内包している在来知の可能性を抽出すること目指した。 本年の研究活動から、当該地域における、1.降雨量やパターンの年変動と各作目の作況の関係、2.生産物販売価格の年変動状況、3.世帯レベルの作付体系とその決定要因、4.家畜生産と降雨量の関係、5.林地・放牧地利用の実態、などについての知見が得られた。それらから、ローカルな農業技術や生業システムの一部が、降雨の不安定性(自然環境の不安定性)と農産物販売価格の不安定性(経済環境の不安定性)を村落レベルおよび世帯レベルで緩和するためのメカニズムとして機能している可能性が見いだされた。例えば、世帯レベルの作付パターンの決定には生産性・収益性を最大化を追求するよりもそれらの年毎の安定性を高めることに重きを置く傾向や、畜産活動が干ばつによる作物生産不況時を補足する役目を持っている一方で豊作時(降雨が比較的多い)には疫病発生頻度が高まるなど作物生産と家畜生産がトレードオフ関係にある可能性などである。 加えて、本研究の基盤となるミャンマー農業・政策に関する資料収集や情報整理をおこなった。
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