本研究の目的は、スポーツ参加・達成における女性間の差異とその差異を生み出す社会的要因・過程を明らかにすることにある。日本・米国・豪州の三国において、プロとして活動する女子サーフィン選手へのフィールドワークから比較分析を行なうものである。平成19年度には、(1)女性間の差異についての具体的な状況の把握と、(2)ライフヒストリーなどの聞き取りのふたつを主な課題とし、米国と豪州での調査を予定していた。 当初の計画通り、夏期休暇中には米国でのフィールド調査を行なった。その結果、日本と米国の女子選手のキャリアには大きな違いがあることがわかった。恵まれた米国の選手の背景には、他国に比べサーフィンが早い時期に行なわれるようになった米国の歴史事情や、選手を育てサポートする組織システムなどがあった。 冬期休暇中に行なった豪州の調査では、当該国の女子選手たち、その家族、関連組織運営者へのインタビューを行なうことができた。この国には、米国をはるかにしのぐ選手育成システムが存在し、これが現在世界プロツアーをほぼ独占・牽引することを可能にしていることが明らかとなった。 得られたデータの分析については、今年度は日本と米国のみになったが、日米の選手をとりまく社会環境について大筋で違いを明確化した。たとえば、サーフィンの歴史的・文化的位置づけの差異、沿岸域の利用や社会的意味の違い、スポーツ一般に対する国民の態度、サーフィン組織の構造の差異などである。こうした分析から、日本に有効と思われる組織運営についていくつかの知見が得られたので、今後は更に豪州との比較の中でより洗練していきたいと考えている。すべての女性がスポーツ参加・達成をより公平な環境の中で実現するために、女性スポーツの象徴としてのトップアスリー間の差異の現状と、その差異を生み出す社会的要因と過程を、こうした質的調査によって追及することが重要であると思われるのである。
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