本研究の目的は、スポーツ参加・達成における女性間の差異とその差異を生み出す社会的要因・過程を明らかにすることにある。日本・米国・豪州の三国において、プロとして活動する女子サーフィン選手へのフィールドワークから比較分析を行なうものである。平成20年度には、(1)日本の女子選手へのインタビュー調査および収集資料の補足調査、(2)女性間の差異と社会的要因との関連の明確化、差異が生成される過程の分析、(3)成果の公表を予定していた。当初の予定通り、日本の女子選手へのインタビューを実施し、昨年度の米国および豪州のデータに日本の選手のデータをくわえ、インタビュー調査を完了した。また、分析のなかであらたに必要になったインタビュー以外のデータについて補足調査を行ない、データを補完した。スポーツ参加・達成における女性間の差異は、女性たちの辿るキャリアを手掛かりに、現状で見られる差異を把握、そしてその背景要因となる部分を抽出するという形で分析された。その結果、女子選手のスポーツ参加・達成は、豪州で最も高く、次いで米国、日本の順であることがわかった。キャリアの差、参加・達成度の差を生みだす背景要因は、以下の三つがあげられる。ひとつめはサーフィンというスポーツ文化の地域浸透度の違い、ふたつめは地域ごとのスポーツ・教育におけるジェンダー体制の違い、そして地域ごとのサーフィン文化におけるジェンダー体制の違いである。スポーツを政策として積極的に取り入れ、スポーツ参与率が男女ともに高い数値を示す豪州が、各地域の女性の比較においても最もスポーツ参加・達成度が高くなっていた。このことは、すべての選手の努力が公平に報われ、結果の平等が達成されるためには、一選手の努力だけでなく、制度上の変革が必要なことを意味している。日本のサーフィン組織内部および世界的な組織によってとられるべき方策とともに以上の成果を公表した。
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