今年度も、昨年に引き続き文献収集及び精査に努め、また、海外でのヒアリング調査及び国際会議への出席も行った。 文献収集及び精査については、高価な図書等の購入ができ研究の助けとなっている。昨年度の報告にも記載したとおり、日本が少子化になっている背景には「リプロダクティブ・ライツ」が保障されていないこと、それはつまり「リプロダクティブ・セキュリティ(性と生殖の安全保障)」が確保されていないからだと考える。そのことについての論点整理として、「日本の女性はなぜ子どもを産ま(め)ないのか?-リプロダクティヴ・セキュリティの必要性-」をヒューライツ大阪の『国際人権ひろば』で発表した。また、8月にはジュネーブの国際人権高等弁務官事務所をはじめとして、国連諸機関でヒアリング及び情報収集を行った。また、6月には日本人口学会にて「リプロダクティブ・セキュリティ概念の一考察」と題し、報告を行った。本報告はリプロダクティブ・ライツを、人間の安全保障の観点から考察し、リプロダクティブ・ライツが保障されるための基盤は何かということについて問題提起及び検討を行い、フロアからも活発な意見及び質問がなされ、今後の研究への新たな課題も明確となった。3月には、国際連合経済社会理事会女性の地位委員会(CSW)第54会期に参加し、各国のNGOや学者達と活発な議論を交わした。本会期は、「北京+15」と位置付けられており、とりわけリプロダクティブ・ライツにっいては重要な論点となっていたため、いま日本では議論になっていない論点についても確認することができた。 最終年度である平成22年度は、これまでの課題を明確にし、リプロダクティブ・ライツが具体的権利となり得るために必要な論点整理を行い、新たな視点が見いだせるよう研究を進めていく所存である。
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