研究概要 |
(1)M. Bloomfield, The seven deadly sins: an introduction to the history of a religious concept. Michigan State UP,1967などを中心に,西洋古代・中世における七つの大罪の成立史を整理しながら,数人の思想家のテキストの検討を進めた。トマス・アクィナスに関しては『定期討論集・悪について』の読解と翻訳作業を中心に研究をおこなった。次年度もこれを継続予定である。(2)トマスの徳倫理学の中核をしめる「思慮prudentia」について,特に「良心conscientia」というはたらきとの関連をめぐって考察した。トマスが,倫理的な徳と知的な徳との関係をどのようにとらえているか,また,直観的に善悪を判断する力についてどのように考えているか,などの論点を検討した。D.M.Nelson,The priorrity of prudence. Pennsylvania UP,1992;T. C. Potts, Conscience in medieval philosophy. Cambridge UP,1980など重要な研究書の検討もおこなった。(3)『神学大全』第II部-II,第123問題以降(勇気について)を翻訳中である。 本研究では,徳倫理の重要な歴史的源泉のひとつとして西洋中世の倫理思想を研究している。四つの枢要徳をめぐる古代以来の様々な理論と,七つの根源的悪徳(いわゆる七つの大罪)をめぐる思想史上の紆余曲折を整理した上で,それらを13世紀のトマス・アクィナスがどのように受け止めたかを考察する。今年度はこの考察のための基盤的調査をおこなうことができた。
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