本年度(21年度)に行った研究実績とその内容は、昨年までの研究に引き続いて、東アジアにおける儒教規範及びそれに付随する諸概念に対するキリスト教(思想)の影響についての検討である。本年は特に主なテーマとして、現代中国及び韓国での状況について、調査、研究を行った。特に、中国における調査、研究の結果は「現代中国におけるキリスト教の状況に関する-考察(-)-寧波、上海地区を例として-」(『北九州工業高等専門学校研究報告』第43号)において発表している。これは現在、キリスト教徒が激増している中国大陸において、実際のキリスト教徒を取り巻く環境がどのように変化しているのか、またキリスト教徒の意識がどのようなものであるのかについて上海と寧波を例として考察している。また、それに付随して、寧波地区における歴史的なキリスト教(特に天主教)に関する論文を取り上げ、訳出・紹介している。これによって現代中国(特に寧波)のキリスト教を取り巻く状況と歴史的な状況との比較を可能にし、今後の中国大陸におけるキリスト教を取り巻く状況の変化を考察するための一助とすることができると考えている。これは今後も継続して行う予定である。 これら以外に学会での発表として、16世紀末に東アジアに伝来したキリスト教において、特に「天」というものの捉え方(観念)が、カトリック・キリスト教のイエズス会士によってどのように伝えられ、紹介されたのか、それらを東アジアの人々がどのように受け取ったのかについて、発表をおこなった(於弘前大学)。これについては、改めて論考を発表する予定である。この他、明末中国における「宗族」について考えるため、九州大学で開催されている研究輪読会には継続して参加している。その成果が「〓豁渠『南詢録』訳注(-)」(『活水論文集』現代日本文化学科編、第53巻)である。
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