研究概要 |
今年度当初に提出した「平成19年度科学研究費補助金交付申請書」に基づいて研究を実施した。 1 文献調査:まず、一次資料(キリスト教諸教会の生命倫理関係の見解・声明など)と日本語・西欧語の二次文献及び参考文献を集め、徹底的かつ体系的な文献調査を行った。生命倫理に対する基本的な立場を表明していると思われるキリスト教諸教会によって公表された見解、声明、回勅などの中には入手困難なものもあったため、それらの見解を十分に把握するためにはドイツのキリスト教諸教会への資料送付依頼およびアンケート調査を行うことが必要であることが明らかになった。また、コメント・概要付きの文献リストを最終年度に公刊することを目的として、まず日本で手に入る資料と文献を検討し、現在の研究水準を確認してから一次資料と本研究テーマに関する学術論文の整理を始めた。その過程で、平成20年度に実施予定のドイツ研究調査旅行で行う資料収集やインタビューの方向性も明らかになった。 2 ドイツのキリスト教諸教会の基本的な声明の分析:現在まで生命倫理に対して最も基本的な立場と方針を述べる声明である『神はいのちの友:生命の保護に際しての要求と課題』(Kirchenamt der Evangelischen Kirche in Deutschland und Sekretariat der Deutschen Bischofskonferenz(Hrsg.), Gott ist ein Freund des Lebens:Herausforderung und Aufgaben beim Schutz des Lebens. Guetersloh.1989.)の和訳を作成し始めた。これはプロテスタント教会とドイツ司教会議事務局(ローマカトリック教会)が共同で編集したものだが、ドイツのキリスト教各宗派のいくつかがそれに与しているので、ドイツにおけるキリスト教の最も基本的なコンセンサスを表す共同見解とされている。本研究テーマに関する今後の研究にも不可欠と思われるその和訳に加え、その分析も行い始めた。その際、キリスト教諸教会は生命倫理という新しい問題を解決するためにどのような聖教解釈を行い、死生観、身体観などについて、伝統的キリスト教思想をどのように新たに解釈し直したか、という点に着眼して検討している。
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