研究概要 |
画家リッポ・ディ・ダルマジオ(1350年頃〜1410年)は、前近代の美術史叙述においてはボローニャの後期ゴシックを代表する画家とみなされながら、それ以後には今日まで不当にも軽視されている。 今年度は,その生涯と作品、そして後世における受容・評価に関する基礎的な調査・研究をおこなった。具体的にはまず、ボローニャそして画家の初期の活動の地であるピストイアに現存する絵画作品を現場で調査・観察して、可能な限りそれらの写真を撮影している。写真の撮影の困難なものについては、ボローニャ美術監督局やピストイア市立博物館の各写真アーカイヴに所蔵されるネガからプリントした。そのほか個人コレクションに所蔵される作品については、ロンドンのコートールド美術研究所やフィレンツェのロベルト・ロンギ美術史研究所で情報を入手し、その図版を複写している。また関連する文書史料のほとんどは、ボローニャ市立図書館アルキジナジオ(以下BCABoと略記)、ボローニャ国立古文書館そしてボローニャ大学図書館などに遺されているが、可能な限りでそれらを参照・複写・筆写した。リッポ・ディ・ダルマジオに関する今日なお最も重要な典拠であるフランチェスコ・カヴァッツォーニの『恩寵の冠』(BCABo, Ms. B. 298)、カルロ・チェーザレ・マルヴァジアの『フェルシナ・ピットリチェ』とその原稿(BCABo, Ms. B. 16)は、多くの時間をかけて読解した。 また、こうして収集し理解した材料のうち、ボローニャの教会サンタ・マリア・デイ・セルヴィに関するものについて、論文としてまとめている。
|