おおむね平成21年度科学研究費補助金交付申請書の記載に従い、順調に研究が遂行された。本年度は以下に記すように祝祭の記録メディアであったフェスティバル・ブックに関する調査を中心におこなった。現地図書館で多くの資料を調査・複写する必要があったため、比較的長期イタリアに滞在し現地調査をおこなった(特にローマのマルコ・ベッシ財団、ブルカルド図書館、アンジェリカ図書館、アレッサンドリーナ図書館、ヘルツィアーナ図書館、フィレンツェのドイツ研究所図書館など)。 (1) フェスティヴァル・ブックの記録する祝祭と現実に執り行われた祝祭の関係を明らかにするために、祝祭を主催した機関の発行するフェスティヴァル・ブックと、同時代の日記、年代記など第三者の目撃した祝祭内容を比較検討した。 (2) フェスティヴァル・ブックにおけるテクストとヴィジュアル・イメージ(挿絵版画等)の関係について、両者の異同のある事例を収集し、さらにその理由について考察をおこなった。頻繁におこなわれる祝祭には雛形ともいうべきものがあり、以前に行われた同様の祝祭のフェスティヴァル・ブックが参照され、場合によっては以前の挿絵を踏襲するケースのあることも確認された。 また、宮廷祝祭に端を発するタブロー・ヴィヴァンが、近代以降に受容された様子についても引き続き研究をおこない、その一端を著書『もっと知りたいボッティチェッリ』において紹介した。
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