本研究は下記の3点を目的としている。すなわち、近世の狩野派によって制作された肖像画について、(1) 多くの未紹介作品があるがそれらを発掘、整理し、重要作品の紹介、位置づけを行うこと、(2) 画面上の賛文あるいは関係する他の絵画、文献資料などによって画家をめぐる人的ネットワークの検討し、作画環境、作画の実態を明らかにすること、(3) 同派の肖像画の様式的特徴とその展開を明らかにすること、(4) 日本における肖像画というジャンルのあり方を検討すること、である。また、副次的な目的として、肖像画研究を効率的にすすめるためのデータ集積、分析および調査などの方法モデルを提示することも目指している。 2年めとなる本年は、上記の目的のうち(1)、(4)について既撮影の35mmフィルムのデジタルデータ化を昨年度に続いて行い、その集積、整理をさらにすすめた。また、昨年度調査、データ化したもののうち特に重要と思われる作品群を対象に(2)、(3)についての具体的な検討を踏まえて論考を発表した。また、その他、個人所蔵家宅2件で調査を行った。調査およびその後のデータ整理に時間が多くかかり、論考は1件しかまとめることができなかった。
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