研究概要 |
町絵師とは,宮廷幕府・大名などに仕えず,市井において絵を描くことを生業とした人々のことを指す。本研究では尾形光琳の活動状況を共時的視点から捉えることにより,江戸前期の町絵師の活動状況を明らかにする。光琳の末裔小西家に伝来した「光琳関係資料」(京都国立博物館、大阪市立美術館分蔵)を包括的に検討することは,光琳研究のみならず近世史研究においても重要性が高い。そこで,光琳関係資料の文書類をデータベース化し,文献的研究を行う。さらに本研究では,同時進行で,絵画作品の実見調査,撮影,作品資料の蓄積を行う。「光琳関係資料」の画稿に含まれている画題(人物図・草花図)を中心に調査研究を行い,その源泉として想定される土佐派・宗達派などの作品を比較参照しながら考察を加え,光琳を含む同時代の町絵師の具体的活動状況を例証することを目的とする。 第1年次である本年度は,文献のデータ化と,尾形光琳の作品および先行・関連作品の調査を行った。 ・光琳資料小西家文書のデータベース化『小西家旧蔵・尾形光琳関係資料』の文書約190点(京都国立博物館所蔵分…152点,大阪市立美術館所蔵分…38点)について,翻刻本に基づきデータ化を行った。次年度以降,テキストと画像を照合できる形に整備する。 ・「四季草花図」(個人蔵)など光琳作品を中心に調査を行い,光琳資料中の画稿との比較検討し,作品の成立過程と表現の特質を明らかにした。その成果の一部は論文および口頭で発表した。 ・やまと絵の伝統を継承する土佐派絵師の作品は,光琳の表現手法を考察する上でも関連が深い。これまで殆ど紹介される機会のなかった,土佐光吉筆「曽我物語図屏風」(鳥取・渡辺美術館蔵)を調査し,研究資料として公刊した。
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