前年度に引き続き『竹田荘師友画録』に収録される九州・山口地域の画人・文人たちの作品調査を遂行した。この作品調査と平行して、田能村竹田並びに関連画人等の研究に関する重要資料の一つである『竹田遺稿』に収録される各詩詞文の年代設定作業を前年度より継続して行い、竹田の足跡や交友状況を正確に把握することに努めた。 年度前半は大分県地域(中津、臼杵、竹田)の実地調査を進め、年度後半は福岡、熊本、山口、長崎の各地で実地調査を行った。調査においては、全図、部分図のデジタル写真撮影、実測による法量データの収集を行い、調査後に随時、デジタル画像のレタッチ作業、データベースの編集を行った。調査各地の中でも、長崎の文人たちの画風は多様であり、明清画に学んだ様子が窺え、竹田も含めて日本の文人たちが明清画にどのように学んでいるのかという問題を考察する上で有用な材料となるだろう。また各地で調査した作品には『竹田荘師友画録』における竹田の評言に合致した、或いはそれを髣髴させる絵画作品も多く、竹田が評価した同時代絵画の表現を確認することができる有益な調査となった。さらに、調査各地において、所在の明確でなかった竹田画を確認するケースもあり、竹田研究に資する重要な作品については、本調査の成果として今後、論文、学会発表にて公表していきたい。 また調査対象画人の中で、頼山陽、田能村竹田らと特に深い交友を持った僧・雲華について、今年度調査することができた中津正行寺と中津市が所蔵する作品、また前年度調査した出光美術館、大分県立芸術会館の所蔵する作品と合わせてまとまった数を把握することができた。しかも雲華の若い頃の作品から晩年作まで、年代的に幅のある作品群であったことから、『出光美術館研究紀要』14号において、年代順に調査作品を紹介するとともに、山陽、竹田との交友関係について整理し、論文という形で調査成果を執筆・公表した。
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