鉛筆は現代に生きる我々にとっては、もはや古いツールである。しかし、幕末明治の頃にあっては、新奇なツールであった。美術の文脈にとっても新しいツールであり、それまでの毛筆と墨などを主とした絵画表現とは異なる様相をもたらした。特に油彩画や水彩画を学び始める以前、その初学の者が利用することが多かった。なぜなら、油彩画、水彩画の道具、絵の具類は輸入品であり、高価だったためである。そのため、鉛筆と紙でもって洋画技法を学ぶことが強いられた時代があった。その制限された時代状況があったものの、そこから新しい表現が生まれていったことを本研究では明らかとした。
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