研究概要 |
当年度においては,(1)京都、大坂における書画会、書画展観の事例集成,(2)書画会データベースの構築における項目選択,(3)書画会の構造と絵師への影響について調査研究を行った。 (1)については,約100件の事例を新たに見出した。その中には書画会に参加しなかったと言われてきた禁裏の御用絵師が書画会を主催し,京洛町人の書画収集家により開催された書画展観の事例が見出され,いずれも従来指摘されたことのない階層が会の担い手になっていたことが判明した。これらの事実からは,書画会主催者の身分的階層の広がりを確認することができた。(2)については,美術品や近世人名、史料に関わる様々なデータベースの設計を調査した。当該研究は,書画会開催事例の集成と共に,どのような人が参加したのかを知り,絵師であればその略伝に一条を加えるための便宜となるような検索データベースの構築を目指している。よって(1)参加者(2)年月日(3)場所(4)書画会、展観名(4)出典,という基礎的な事項を容易に検索できるようにシステム設計をした。また書画会の展開が分かるような年表の作成も行っている。(3)書画会席上で描いた作品は多くを見いだせなかったが,数点の作品を知り得た。それらには偶然性に起因する表現(畳目やかすれ,にじみ)を多用していることと簡略性,墨の多用などが指摘できる。近年簡略な筆致(一筆描き)に対しての考究がなされているが,書画会という場の存在もそのような研究に影響を及ぼすと考えられ,今後の検討課題として採用される意義がある。
|