研究概要 |
古代東南アジアの三尊像図像の成立と展開について明らかにするための基礎データを構築しようとする本調査研究では,上座部仏教下にあって判然としなかった大乗仏教の図像を掘り起こすことを主要な課題として,下記の成果を得た。 (1)ミャンマーを初年度の調査実施国とし,ピューおよびモン関係の図像について,エーヤーワディー河中流・下流域,およびタトン周辺の遺跡および博物館の資料を調査した。特に,これまで日本では知られることのなかったモンの作例を実見することができ,比較研究する上で有益な資料を得ることができ,予想以上にタイのドヴァーラヴァティーとの共通性を知ることができた。また,ピューの資料としては奉献板を含む観音像および三尊像の基礎データを構築中であり,今後、図像を系統づけて分類する予定である。 (2)現在知りうる限りの,日本国内に保管される古代東南アジアの三尊像図像について,その基礎的なデータを収集した。 (3)図像受容の枠組みを相対化する試みとして,特にパーラ朝の影響が色濃くなる8世紀から9世紀,そして上座部仏教が広まった11世紀から13世紀の図像の様相について現存作品をもとに一覧を作成した。一方で碑文資料についても収集し,教義と実際の信仰の実態について理解するための基礎資料とするために整理を進めている。今後,他地域と比較することで,基層部分の個別性を浮き彫りにすることが可能になる。
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