平成19年度は、雑誌『日本少年』におけるジャンル小説ならびに読者関連記事の資料を収集し、ジャンル小説についての分析を中心に行った。 1 ジャンル小説の分析 (1)『日本少年』におけるジャンル小説のバリエーションやジャンル名の用例を整理・分析するための予備的作業として、『日本少年』に先行する雑誌『少年世界』におけるジャンル小説の分析を試みた。創刊当初は「文学」に比して「小説」の運用が不安定であったが、やがて「小説」の細分化が生じ、それに伴い、ジャンル小説が多様化する過程が明らかとなった。 (2)『日本少年』におけるジャンル小説(冒険小説/探偵小説/滑稽小説/立志小説)に認められた暴力表象の類型化(向秩序型直接的暴力/反秩序型直接的暴力/反秩序型間接的暴力/向秩序型間接的暴力)の妥当性を検証した。冒険小説と探偵小説とが未分化のケースが散見されたので、探偵小説については狭義のケースのみを検討するなどの修正を加えた。 2 理論研究 『日本少年』におけるジェンダーを分析する理論として、オースティンやバトラーの発話行為論を検討し、次年度の表象分析のための基盤を固めた。言語(ナラティブ、会話等)による間接的暴力を分析する際の視点を得ることができた。
|