平成20年度は、雑誌『日本少年』におけるジャンル小説ならびに読者関連記事を収集し、ジャンル小説についての分析を中心に行った。 1通時的に概観した結果、『日本少年』においては、編集主筆がジャンル小説の掲載傾向に少なからぬ影響を与えていることが示唆された。 (1) 初代主筆の星野水裏から2代目主筆の石塚月亭までの草創期(創刊〜5巻2号)においては、「小説」という語が冠された作品の掲載回数自体が多くはない。このことは、少年雑誌に「小説」を掲載することが自明ではなかったことを示していると考えられ、新たな検討課題を得ることができた。 (2) 3代目主筆の瀧澤素水の時代(5巻3号〜7巻14号)にジャンル小説の掲載件数が増加し、4代目主筆の有本芳水の時代(8巻1号〜14巻9号)にジャンル小説が確立をみる過程がうかがえた。 2ジャンル小説における暴力表象については、ジャンルと暴力表象との間に関連性が認められた。タイプの異なるジャンル小説が同時に掲載されるという雑誌メディアの性質上、それぞれの作品に描かれたジェンダー間にコンフリクトが生じているケースが散見された。編集主筆等に着目するなどして、掲載時期における支配的なコードを踏まえた上で、個々の作品を分析することが今後の課題として見出された。
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