アジア文学・文化の『うつほ物語』への影響を明らかにするため、今年度は、仏典引用のデータ集積および唐物(主に仏具)の調査研究を行った。 まず、『うつほ物語』等平安前期言語文化圏における引用仏典の実態を明らかにするために、研究協力者とデータ集積を行い、データベース化を目指した。この研究成果については、次年度インターネット上で公開する予定である。特に、日本漢詩文の仏典引用についてはまとまった研究がなく、この調査研究によって体系化したいと考えている。 研究を進めていく中で、玉虫厨子的世界観が『うつほ物語』や『源氏物語』に認められるのではないかと考え、『聖徳大学短期大学部国語国文学会会報』2号(2008年3月15日発行、6〜8頁)で指摘した。今後は、この指摘の裏付けが必要であり、引き続き調査して論文化したい。 次に、仏典引用と関連して、仏具を中心とした唐物の『うつほ物語』への影響を調査中である。こちらも日本漢詩文中の唐物についてはあまり研究されていないので、それらをデータベース化し、『うつほ物語』との関連を考察する予定である。研究成果については、次年度3月にシンポジウムを開催して公開する。 次年度はデータ集積がある程度まとまったものになるので、仏典引用と唐物を総合して、アジア文学・文化の影響を考察する予定である。
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