アジア文学・文化の『うつほ物語』への影響を明らかにするために、今年度は、仏典引用のデータ集積、唐物(主に七絃琴)・樹木神話の調査研究を行った。 1、仏典引用のデータについては、公開するにはまだ不備な点があるため、公開を次年度に先送りすることにした。次年度中には、公開したい。 2、「平安前期文学と玉虫厨子的世界観」については、引き続き調査中である。 3、唐物の七絃琴については、その材である樹木に注目し、アジア文化との関連および『うつほ物語』の七絃琴の独自性について明らかにすることを試みた。そこで、原豊二氏の平成20年度・科学研究費補助金(若手研究(B))・課題番号18720059「日本文学における琴学史の基礎的研究」と連携して、「源氏物語と七絃琴京都シンポジウム」(於同志社大学、2009年2月28目)を開催し、コーディネーターおよび司会を務めた。さらに、シンポジウム「<琴韻>のテクスト学構築のために王朝物語史の中の東アジア文化」(於立教大学、2009年3月8日)を開催、基調報告「『うつほ物語』の音楽と樹木神話」を行った。両シンポジウムの成果については、『アジア遊学』(勉誠出版、2009年9月刊行予定)に掲載予定である。 4、研究を進めていく中で、樹木神話と王朝物語との関連については、『源氏物語』にその終焉があるのではないかと考え、「木の下の浮舟」と題して学会発表(於聖徳大学短期大学部国語国文学会、2009年2月5日)を行った。次年度に論文化する予定である。
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