前近代の日本人にとって、和歌詠作とはいったいどのような意味を持つ行為であったのか、どこには近代的な文学創作の範疇を越えた、文化的な意味があったのではないか。このような問題を解明すべく、本研究に取り組んでいる。和歌文学史の研究は飛躍的に進展したものの、従来の和歌文学研究では、歌壇の動向や歌論・和歌の注釈などがその中核をなしており、和歌詠作の具体的な実態については未だ十分に解明されているとは言い難い。千年以上に及ぶ和歌の歴史の中で、当然ながら近世期については、詠作に関わる文献資料が大量に残されており、その実態を探るのには最も適した研究対象である。しかしながら、それら資料群は、あまりに膨大で未解明の部分が大きい。膨大に残る資料群を何とか活用し、和歌詠作の実態や現場を具体的に明らかにすることが、本研究の大きな目的である。このことは、文学史のみならず、文化史的に見て意義がある。
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