研究対象は、平安~鎌倉時代(10-14世紀0に作られた'作り物語'(『源氏物語』など)である。私は、物語の写本に着目し、それらの本文異同・書写様態・残存状況、および、物語の注釈書などを調査した。具体的には、『源氏物語』の特殊な本文が『更級日記』に受け継がれていることを明らかにしたり、現存『源氏物語』に含まれない「巣守」巻の内容を考察したり、作り物語全体に共通する要素を抽出して他のジャンルの諸作品と比較したり、物語に対する従来の文献学の問題点を洗い直したりした。写本の形態に着目する本研究は、内容分析ばかりを行う近年の物語研究を超克し、物語研究の新たな方法を呈示するものである。
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