平成20年度は研究計画にしたがって、1920年代の都市と技術文化の関連を群衆および集団的身体経験との関連性において検討した。研究面での主要な活動および成果としては、まず第一に2008年8月に金沢で開催されたアジアゲルマニスト会議への参加が挙げられる。ここではセクション「ポップ・メディア・メガロポリス」の共同運営者としてパネルの司会および発表を行い、アメリカ、ドイツ、韓国、中国の研究者と活発な意見交換を行った。そこで私が行った発表は、「〈ガール〉の発明 : 両大戦期におけるアメリカナイゼーションを巡る言説の比較考察」と題し、ヴァイマール共和国時代の群衆論でも重要な主題となったガールズダンス(ティラーガールズ)をめぐるドイツの言説を日本におけるモダンガールについての言説の展開と比較しつつ考察したものである。この発表はすでに論文にまとめられており、今年中に刊行される論集に掲載されることが決まっている。 また昨年度は、計画にもとついてベルリンの州立図書館において、資料収集も行った。日本では入手不可能な1920年代後半の保守革命系の雑誌(StandarteやArminius)を閲覧・複写し、当時エルンスト・ユンガー周辺にいた作家や活動家の発言を知ることができた点は、大変有意義であった。今後、これらの資料にもとついて、エルンスト・ユンガーの群衆や集団についての言説の展開を再構成し、当時の思潮のなかに位置づける論文を執筆することを予定している。
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