本年度は、過去2年の研究成果および平成20年度に提出した博士号学位取得論文の刊行を視野に入れた準備作業を行うとともに、国際学会で研究発表を行った。 研究発表は昨年10月にアメリカ合衆国ワシントンDCにて開催されたGerman Studies Associationの年次大会で行われた。この大会のパネルにおいて、ドイツ・ベルリンの1920年代における都市空間の表象と都市経験の記述を同時代の日本・東京のそれと比較する発表を行った。これは本研究のテーマのひとつである情報メディアや交通の技術によって構築された都市空間の経験の分析と密接に関連している。この学会は、アメリカはもとよりドイツやアジア諸国から多数の研究者が参加する大規模なもので、総じてレベルも高く、発表およびその後の質疑応答によって非常に有益な意見交換を行うことができた。またワシントン大学の著名なブロッホ研究者であるルェツェラー氏(パネルの司会を務めた)を始め、優れたアメリカ人研究者と議論する機会を得たことも今後の研究にとって有益であった。 論文としては、昨年度の学会発表に基づく論文を論集に寄稿したが、残念ながら編集作業の遅れにより現時点ではまだ刊行されていない。しかし、遅くとも平成22年度中には刊行される見通しである。また当初予定していた遊歩文学についての論文については現在執筆作業に入っており、若干予定が遅れているものの成果として発表できる見込みである。また本研究テーマと密接に関わる小論を雑誌に寄稿している。この小論では、1920年代末に始まるベルリン・アレクサンダー広場の再開発が、アルフレート・デーブリーンの小説とライナー・ヴェルナー・ファスビンダーによるその映画化においてどのように表象されているのかを考察している
|