本研究の1年目(計3年間)に当たり、実践的なドラマトゥルギーに関して国際的、学際的な研究発表と調査を行い、同研究の基礎固めを行った。 国際的な研究発表は2件行った。平成19年9月にはヘッセン州・アカデミー並びにフランクフルト大学主宰によるシンポジウム「21世紀のヨ-ロッパ・ドラマトゥルギー」において、日本における演劇制作のあり方にについて発表を行った。同発表では、大きく異なる日本の演劇と欧州の演劇における共同制作の困難さと可能性について論じた。平成20年3月にはブリティッシュ・コロンビア大学主催によるシンポジウム「Body-Spaces」において、日本におけるギリシア悲劇の受容についての研究発表を行った。同発表では、日本の演劇集団ク・ナウカのギリシア悲劇『メデイア』における声のパフォーマンス的特徴について分析し、日欧の演劇文化の生産的な邂逅について紹介した。いずれも来年度には研究論文として発表する予定である。 ドラマトゥルギーの国際的な傾向の調査にていては3件行った。いずれも海外から所属先に専門家を招き、(演劇や映画制作における重要な戦略と構想を練る)「制作ドラマトゥルギー」について、自身の活動について講演してもらった。3件は次のとおりである。(1)ドイツの映画監督アンドレス・ファイエル氏による映画のドラマトゥルギーの報告(平成19年10月)。(2)メルボルン大学准教授でドラマトゥルクであるピーター・エッカサル氏によるパフォーマンス芸術のドラマトゥルギーの報告。(3)ブリュッセルでダンス・ドラマトゥルクとして活動し、日本演劇の研究も行っているサラ・ヤンゼン氏にダンスのドラマトゥルギー的戦略と制作プロセスについての報告。これらの報告については、約2年後に上梓するドラマトゥルク・ドラマトゥルギーの研究書に反映させることになっている。
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