平成19年度に引き続き、平成20年度も主にアメリカの学校教科書、特に初等高学年、中等教育レベルのアメリカ文学と読解分野の教科書の収集を行った。特に、夏期には比較的長期にわたってワシントンDCの米国議会図書館に滞在することができ、未見の1870年代から20世紀前半に及ぶ300点におよぶアメリカ文学と読解の学校教科書を調査することができた。また、高校レベルまでの学校教科書が主な対象とはいえ、大学レベルの教科書との互換性や影響関係もあるので、著名なものについては、通常は大学レベルで使用される教科書についても収集と分析を進めた。加えて、近年の電子資料媒体の急速な発展により、版権の切れた教科書についてはその多くがオンライン上でも閲覧できるようになっているので、主として「Internet Archive」というウェブサイトを利用したオンライン上での資料収集も積極的に進めた。その結果、1945年以前においては130点ほどの学校教科書において、マーク・トウェインへの言及、分析、作品の抜粋掲載などがなされていることを突き止めた。分析を通して、同時代の教育現場におけるトウェインの正典化の流れが徐々に明らかになりつつある。 また、資料収集に加えて、トウェインが生存した時代(1910年以前)については、収集した教科書の内容分析も進めた。まだ論文の形としてはまとまっていないが、現時点では500枚近い内容分析に関するカードを作成中である。同時代については、更なる分析を行い"Mark Twain and American School Textbooks ; 1870s-1910"として、来年度の平成21年度、8月にアメリカで開催される国際大会で発表を行う予定。すでに同学会の審査委員会より発表承認の通知をを受けている。
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