本年度は、平成19年度、20年度に行ってきたアメリカとカナダにおける国際著作権法の成立・発展と独自の文学の成長との関連についての研究をまとめた。アメリカもカナダも、イギリスを旧宗主国とする国であるが、後者の文学的独立が、アメリカのそれよりも大幅に遅れた理由はやはり、イギリスからの政治的独立と国際著作権法に対するスタンスの違いによるものであったことを明らかにするため、(1)19世紀から20世紀のイギリスにおけるアメリカ文学論の展開とその特質(2)19世紀における国際著作権法に関するイギリス、アメリカ、カナダにおける議論(3)アメリカ、カナダ両国におけるイギリスの作品と自国の文学者による作品の出版状況(トウェイン、ホイットマン、チャールズ・ロバーツ、L.M.モンゴメリら代表的な文学者数名に着目)(4)アメリカ、カナダにおける独自の文学の成立・発展をめぐる議論についての研究を進めた。 国際著作権法関係の文献、イギリス、アメリカ、カナダの文学・著作権・出版業に関する文献を調査するため、イギリスの大英図書館、カナダのトロント大学図書館、アメリカの議会図書館、ニューヨーク公立図書館などで文献調査を行った。研究の成果の一部は、『知財研フォーラム』における、国際著作権法の成立、トウェインとストウの国際著作権保護に対するスタンスと働きかけに関する論文にまとめた。また、カナダにおける文学的独立を希求する動きと著作権の成立・発展との関係についての論文、ディケンズとアメリカの出版者ハーパーとの関係の変遷に反映される英米の著作権保護をめぐる問題についての論文を執筆中である。
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