本研究の目的は、ビルマ国文学の核である「タチンジー」と総称される古典歌謡におけるジャンル形成過程を明らかにすることである。21年度の作業として実施したのは、第一に、現地における古典歌謡教授方法・芸能コンクールの調査(9月)である。報告者はビルマ古典歌謡の楽器である竪琴の曲の中でも、最も難易度の高いジャンルであるパッピョー(鼓歌)の作品を、マンダレーにおける代表的な竪琴教師のドー・キンメイから受け、さらに、毎年記録を続けている芸能コンクールのマンダレー管区予選の模様をビデオで撮影記録した。ビルマ古典歌謡の教授は現在でも口頭による伝承が主であり、定期的に現地で演奏技法の教授を受けることは、口頭伝承のあり方を実体験するために重要であり、本研究課題の目的であるジャンル形成過程を明らかにするために欠かせない。21年度はこれまでの調査の結果を踏まえた上で、歌謡と詩の比較研究を加えた研究成果の口頭発表を6月7日に第33回日本口承文芸学会大会(於、奈良教育大学)のシンポジウムにおいてパネリストとして行った。さらに、今年度の研究成果を論文「ビルマ古典歌謡におけるジャンル概念-ウー・サ歌謡集の19-20世紀における貝葉写本の分析を通して-」にまとめて投稿、受理された(大阪大学世界言語研究センター論集3号)。さらに、本研究の主な目的の一つである、ビルマ古典音楽のアナログ音源のデジタル化、作品の特定と整理の作業を進めた。
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