1. 記述と分析 本年度は、命題レベルから発話/談話レベルへの文法化・多機能化を見せる言語形式の事例分析と理論化を目指し、以下の分析を行った。 (1) 事例分析 : 動詞"添"の文法化・多機能化 動詞"添"(「追加する」)が<動作レベル>における「数量の追加」を表すだけでなく<叙述レベル>において「事態の追加」を表す機能をも獲得し、さらに<心理レベル>における「予定外事態発生」を表す機能を獲得するに至った一連の機能拡張のプロセスならびにこれらの"添"の文法的ふるまいの特徴を、「追加する」という動詞としての意味や音声的特徴に着目し考察した。さらに、従来指摘はないが、"添"が命令・禁止文において聞き手への念押しを表す機能をも持つことを指摘し、これについては「追加」機能が<言語行為レベル>へと拡張した結果「要請の追加」という対人的な談話モダリティ機能を獲得するに至ったものであるとの分析を提示した。 (2)事例分析 : 構造助詞"〓"の多機能化 構造助詞"〓"(「〜の」)がいかにして条件節を導く機能を獲得し、また文末助詞としてモダリティ機能を獲得するに至ったかを、(主に連体修飾構造や名詞化構造を形成する場合の)構造助詞"〓"自身の持つ意味特徴に着目しつつ説明を与える試みを行った。 2. 言語資料の電子化 実際の談話活動を反映すると見られる広東語言語資料10数点を、実例検索作業の効率化のため、データ入力会社に委託して電子化を行った。
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