研究概要 |
我々は,あいまいな統語構造をもつと思われる文を発する際に,イントネーションやポーズを利用し,聞き手の理解を支援している.本研究では、成人の日本語母語話者が日本語の音声言語の文処理を行う際に,イントネーションやポーズといった韻律情報が統語構造の構築および文処理の即時性に対してどのような影響をもつのかについて,事象関連電位を指標とした調査を実施している。今年度は,隣接する修飾語である形容詞と被修飾語である名詞の間に意味的な不整合が生じるような句を聴取したときに,その二語間に現れるポーズが文理解を支援するか否かについて事象関連電位を指標とした調査を行った.まず,意味的な不整合のある修飾語と被修飾語からなる句と意味的な不整合のない句を音声で提示し,それら二種類の句を聴取した際の事象関連電位を測定した.その結果未的な不整合のある句は,そうでない句と比較して,意味処理を反映しているとされるN400が有意に観察され,これまでの先行研究を支持する結果となった.次に,修飾語である形容詞とそれに続く二つの名詞からなる句を用いた調査に移った.ます第一段階として,オフラインによる予備調査を行った.この調査では,形容詞とその直後に後続する名詞の間のポーズの時間長を変えた音声刺激を提示し,句の意味が容認できるかどうかの課題を行った.ポーズの時間長が短いときは第一名詞が,長いときは第二名詞が被修飾語になると予測され,それに沿った意味判断がなされると期待されたが,実験参加者および刺激によって容認度にばらつきがみられる結果となった.語彙の選定,文全体におけるポーズのとり方の統制が今後の課題となった.
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