研究課題
1.今年度は、日本語の数量詞遊離が主語名詞句から可能な揚合、動詞句および文はどのような構造的、意味的、語用論的特徴を有するかについて考察した。2.考察の結果、以下のことが明らかになった。(1)数量詞遊離文にみられる名詞句の部分・非部分の解釈と分配・非分配の解釈の可能性を考慮すると、日本語の遊離数量詞には名詞句に関連付けられる数量詞(NP数量詞〉と動詞句に関連付けられる(VP数量詞)の2種類が存在する。(2)数量詞遊離文の適格性は、数量詞の持つ意味機能、名詞句および動詞句のあらわす意味、数量詞が置かれる文中での位置、さらに談話情報、ポーズを置く位置などの様々な要因が複合的に関連し合い決定される。3.今年度はとりわけ、数量詞遊離文の解釈が実際の発話ではどのように特徴付けられるかを観察し、形式と情報構造(焦点構造、イントネーション)の相互関係に焦点をあてた分析を試みた。そして、この現象がコンテクストに依存して分析され得ることを示した。4.以上の結果を踏まえ、数量詞遊離の形式とその量化の決定の仕方について精密な研究を現在継続している.そこでは、遊離数量詞が文の派生のどの過程で、どのように解析されるかを実験で確認することにより、意味的・談話的機能を考慮に入れながら、数量詞遊離文の意味を適切に計算することが可能になると考えている。今後は、意味論だけでなく語用論をも統語論の範囲で処理できる動的統語論(Dynaic Syntax)の理論的枠組みを用いて、数量詞遊離における構造構築と構造解析を同一に捉えることで、数量詞遊離現象にみられる諸特徴をどのように記述、説明できるかを考えたい。
すべて その他
すべて 雑誌論文 (1件)
pers from the International Symposium on Language, Mind, and Brain, ed.Hiroto Hoshi. 08(To appear)