研究概要 |
本年度は,各種の韻律語形成のしくみを分析するに際して必要とされる言語事実の収集を研究活動の主体に据え,分析の基盤を早期に形成することを目標に,言語事実の収集と記述に係る次の作業を行った。 1.オノマトペ:新造形式を中心に,話し言葉で使用されるオノマトペ語形を漫画作品等から収集し,今後の研究に活用すべく資料化した。オノマトペでは日々新たな形式が語彙化されつつあるが,この作業は新造語形生成の実相を捉える上で不可欠の作業である。 2.短縮語形成:複合構造を持つ外来語に由来する短縮語を雑誌・広告・新語辞典・外来語辞典等から広汎に収集した。その中から不規則なパターンを持つ短縮形を整理抽出し,条件別抽出機能を備えた音韻構造データベースを作成した。このデータベースは,不規則形生成の因子の特定を目指す今後の分析に大きく寄与し得るものである。 3.混成語形成:混成語の文法性の分析に向けた語形成実験のデザインを構築すべく,実験の刺激語となる形式の選定と構成に向けて,3〜5モーラからなる外来語をNTTデータベースシリーズ『日本語の語彙特性』より収集し,それぞれの音韻特性(モーラ数・特殊モーラのタイプと位置・音節数・音節構造・アクセント型)の記述を行った。現在,パイロットテストの実施に向けて実験デザインの検討を継続的に進めている。 上記の作業に加えて,将来的な分析に備え,従来および現在の音韻理論研究の知見について精査・検討した。今年度は,音調平面での韻律計算機構について,方言アクセントの変異現象を素材に検討し,表示の理論である自律分節理論と計算の理論である最適性理論の異同について考究を進めた
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