本研究では、視覚的文脈情報と文発話および文理解のそれぞれにおいて、視覚的文脈情報が韻律惰報とその解釈にどのような影響を及ぼすかを検討することを目的としている。本年度は、非続語的諸情報を統制した言語材料を用いて、視覚的精報を操作したうえで、話し手を対象にした眼球運動測定実験および発話実験を行った。アクセント有無を統制したうえで、左右枝分かれ構造の曖昧性を有するフレーズを作成し、それに対しそれぞれの(左あるいは右枝分かれ)解釈に対応するオブジェクトを含む絵刺激を作成し、条件の組み合わせを操作しながら複数の実験を行った。この結果を国際学会にて発表した。この際、当初の計画に加えて、先行刺激によるプライミング効果と、また韻律的強調が起こる句の位置を要因として加え、プライミングによって引き起こされるコントラストと、韻律精報によってもたらされるコントラストの情報が整合している場合としていない場合に分けて検討した。この結果、同一の韻律情報が、状況によって異なる情報的価値(談話情報もしくは統語構造を示す情報)を持つことが示唆された。また、前年度に行った、日本語Wh句の領域曖昧性と韻律情報の働きについて発話および理解実験の結果を論文として出版した。
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