5月24目に日本アフリカ学会学術大会にてウォライタ語に関する口頭発表を行った。従来の表面的な記述を越えた、文の構造に関する深い議論を提起出来た。有益なコメントや質問も得られ、それらを元に現在論文を執筆中である。 又、8月7日から9月28日にかけてエチオピアでの現地調査を行った。それにより、日本では一次資料の収集が絶望的なウォライタ語とカンバタ語の調査を行う事が出来た。 ウォライタ語に関しては、上記学会で扱った内容を更に充実させるべく、詳細な文法調査を行った。また、現地で販売されているウォライタ語によるポップスの歌詞の分析も行った。これにより都市での生活では収集し難い語彙が得られ、彼等の文化・世界観にも迫る事が出来た。 並行的に、ウォライタ語の話されている地域に隣接した地域で話されており、系統的に多少疎遠なカンバタ語の基礎的な調査も開始した。調査票に基づく2000弱の基礎語彙の収集と、初歩的な文法調査を行った(録音を含む)。ウォライタ語に類似した語が幾つも採集され、今後の言語接触・比較言語学の両面かちの研究とって貴重な資料となるであろう。文法は総ての事項を調査出来た訳ではないが、名詞類の語形変化が予想以上に複雑そうであるとの見当が付いた。又、トーン(音調)が文法的な役割を果たしていることも明らかになった。エチオピアの諸言語に特有の「擬声語」を利用した表現も見付かった。何れも記述言語学の立場からは興味深い現象であり、今後のアフロアジア諸語研究にも重要な視点をもたらすであろう。
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