本研究は、これまでの統語的研究では中心課題とはなってこなかった「物事の状態や属性を述べる状態的な文(状態文)」の統語構造を、「叙述の類型」という観点から、通言語的に解明することを目指すものである。主な対象言語は、日本語、英語、韓国語である。 平成19年度はこの研究の第一段階として、対象言語の統語現象に関わる研究、統語構造についての理論的研究等の先行研究の文献収集を行い、本研究の基礎的な研究として、「状態文」に関するこれまでの研究史を概観する解説論文を執筆した。状態文についての先行研究は非状態文、つまり動的事象を表す文についての研究と比べ、数は少ないのであるが、それでも重要な先行研究が存在する。それらの研究を、本研究で取る枠組みであり日本語について提案された「叙述の類型」という概念との共通点、相違点に着目し、検討することで、状態文分析に残された課題などを明らかにした。これまでこのような視点から書かれた解説論文はほとんど存在しないため、挑戦的なものであり、もちろん課題は残るものではあるが、状態文研究の紹介としての役割を果たすものになったのではないかと思う。また、解説論文執筆に平行し、構文と叙述の類型に焦点を当てた研究会を行うことで、問題点等を様々な視点から把握することができた。 平成19年度の研究内容の二点目としては、次年度の調査に向け試験的なデータ収集を行ったことがあげられる。先にあげた先行研究を検討する中で明らかになってきた問題点に対し、対象言語ではどのような統語現象が観察されるのか、叙述の類型がその現象にどのような影響を与えているのか、など試験的にデータ収集を行うことで次年度の調査の方向性を整えた。
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