小林英樹(2007)「漢語サ変動詞の意味・用法の記述的研究-「建築(する)」、「建設(する)」などをめぐって-」(『語学と文学』43)で分析できなかった「新築(する)」、「増築(する)」などの分析に取り組んだ。その結果、以下のようなことが明らかになった。 (1)「新築(する)」には、「設置(する)」に近づいているものがある。(シアヌーク国王が創設したカンボジアの政党、民族統一戦線の本部に立つ国王の銅像に屋根が新築された。(毎日新聞2003年8月8日)) (2)「新築(する)」には、(A)今ある建物に付け加える「増築(する)」(ビルは69年に鉄筋4階一部3階建てで造られ、5年後に4〜7階を鉄骨で増築した。(毎日新聞2003年3月17日))、(B)新しい建物を建てる「増築(する)」(堺市緑町3丁の分工場も、現在の建物の隣に3階建ての建物を増築する。(毎日新聞2003年1月21日))がある。 一般の国語辞典では、「改築(する)」は、「建造物の全部、または一部をたてなおすこと」のように記述されている。しかし、「改築(する)」には、建て直しではなく、改修を表すものがある。(築18年の寮は今センバツ期間中に改築され元食堂や48人収容の大部屋も3人部屋になる。(毎日新聞2003年3月11日))改修を表す「改築(する)」は、「リフォーム(する)」と類義関係になる。(しかし家族が増えたり、生活様式が異なってくると、昔のままの間取りでは当然、生活しづらくなる。建て替えの話も出たが、峰岸さんは「家を残したい」という思いが強く、5年前、内部をリフォームすることにした。外観と柱、梁(はり)はそのまま残し、棟続きの物置だった部分を峰岸さん夫婦、子供たちの生活の場に改築した。(毎日新聞1993年10月30日)) 以上のようなことを、小林英樹(2008)「漢語サ変動詞の意味・用法の記述的研究-「新築(する)」、「増築(する)」などをめぐって-」(『語学と文学』44)として、まとめることができた。
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