本研究の目的は二点ある。 1. コーパスデータの定量的分析を通し、使用態に即した日本語の文法構文の記述レベルの調査分析を行う。 2. 1による研究成果を日本語教育文法へ実装するために実験を行い、最終的には日本語教育に資することを目指す。 1に対する理論的背景として、意味と形式のペアに基づく一般化を推進している認知言語学的構文文法の枠組を用いて、研究を行う。2に対する理論的背景として、近年英語教育を中心に定着しつつある、コーパス基盤の習得研究の枠組を用いて、研究を行う。本研究の方法論的特徴として、自然言語処理のデータ抽出技術やテキストコーパスやシソーラスなどの言語資源をフルに活用し、語彙論の枠組で発展してきたコーパス言語学の研究成果を実証的構文研究へつなげていく点が挙げられる。 昨年度は主として研究目的での調査を行ったが、今年度は昨年度の成果を引き継ぎ、より実質的なデータを作成し、複数の研究者間で共有することに重点をおいた。とりわけ、1については形容詞の活用形による分布状況をコーパスから調べあげ、活用形による形容詞辞書を作成した。2については、昨年度の「タグ付学習者コーパス」を利用し、「算出に基づく学習者の語彙データベース」を作成した。なお、この二つの研究成果はそのいずれも筆者が運営するホームページ「コーパス日本語学のための情報館(http://www30.atwiki.jp/corpus-ling/)において、現在公開されており、多数の関係者に利用されている。これらは日本語教育分野における語彙研究の新たな共有資源となることが期待される。
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