今年度は当該研究の初年度ということもあり、当初の計画通り、時間副詞・同族目的語構文・復合語名詞に関する文献のリストを作成し、その網羅的な調査を行い、分類・整理した。また、これまでの研究で読んだことのなかった論文や新しく出版された文献を中心にリストアップした。この調査により、先行研究の問題を指摘し、何が説明されるべきかを明らかにした。 先行研究の調査と平行して、時間副詞・同族目的語護文・復合語名詞に関する言語データを収集した。データ収集には先行論文からはもちろん、コーパス、小説、雑誌、新聞などがいろいろなジャンルを考慮に入れて収集した。 今年度は、上記3つの研究テーマのうち、特に同族目的語構文に関して他の2つのテーマよりも進めて研究を行った。その際、構文文法と認知文法という2つの枠組で分析を行った。その研究においては、まず非能格動詞の区別をなくすべきであるという先行研究を批判し、その区別は段階性はなすものの考慮すべきであるという主張を行った。また、修飾要素と統語テストの関係に注目して、it代名詞化のテストは目的語が対象化可能か判断するテスト、受動態は主語が影響が与えられているかを判断するテストとして機能すると主張し、データを提示することで裏付けを行った。認知文法の観点からは、主語のエネルギーの存在と主語の状態変化のあるなしに注目することが重要であるという分析を行った。本研究は、先行研究の不備を指摘し新しいデータを提示した点で同族目的語構文に関する研究において意義のあるものである。また、従来提示された一般化よりも説明力のある点で重要な研究であると考えられる。
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