研究概要 |
本研究の目的とそのための研究内容は以下の3点に要約される。 1. 依存詞並べ替えが、インターフェイス、特に音声形式(PF)制約と、統語的制約の両方を受けていることを、日英語以外の言語、特に音韻論的には英語に近く、統語論的には日本語に近いドイツ語やオランダ語で検証する。 2. 語順を律すると考えられている統語的な原理(例えば主要部パラメター)が、インターフェイス制約からどの程度導かれるか、主に英語と日本語の資料や先行研究をもとに分析し考察する。 3. 1, 2の分析・考察結果が以下の2点を通じて、言語機能の構造とその一般認知体系における位置付けの解明に貢献することを示す。(i)語順を律する原理がPFインターフェイス制約を反映していることを示した上で、意味形式(LF)制約がどこまでPF制約に、さらにはより一般的な言語運用の原理に還元されるかを追求する。(ii)言語機能内での統語構造の構築が、韻律単位をもとに左から右へとなされるのだという仮説がなす予測を検証する。 平成20年度は、平成19年度に得た文献・資料をもとに言語観の比較・分析を進め、それを本の形式でまとめて出版するための準備を進めた。11月には第39回NELSにおいて"An interface approach to stranded prepositions"と題する論文を発表し、依存詞並べ替え以外の現象においてもPFインターフェイスの観点からアプローチすることが妥当である場合があることを示し、聴衆から貴重なフィードバックを得た。 その他、本の最終章の執筆に備え、現在言語学と興味深い接点を見せている物理学分野の参考資料を数点購入した。
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