研究概要 |
平成20年度は, 前年度に行ったパイロットスタディの結果を受けて, 語彙研究に有効なコーパスを選定し, 本格的な研究への取り組みを始めた. 実際にはTimes Archiveやその他の新聞アーカイブと合わせて, 英語大規模コーパスであるBritish National CorpusやWordbanks Onlineも, 新聞アーカイブで不足しがちな日常的な語の用例を補うのに有効であるという結論に至った. 具体的には, 日本語か照の借用語を取り上げ, 検索・データのダウンロード・データの分析までを行った.その結果, これまではどのコーパスでも検出不可能であった古い年代か照現在に至るまでの語彙の語法・意味変化の様子を描き出すことができた. 特にTimes Archiveでは200年以上遡って記事を検索可能なので, 通時的な変化だけではなく, ある特定の語が借用された当時の時代背景や, その語が示す事物に対する人々の受け止め方なども読み取ることができ, 貴重なデータとなった. また, コーパス研究ではまだあまり取り上げられていないメタファーを対象とした研究も行った. メタファー用法の検出は, コンピュータによる自動化されたプロセスでは不可能なため, 設定した語彙を検索した後, 研究者自身でメタファー用法であるかどうか選別する必要があり, 多大な時間を要した. その結果, ある語句が比喩として用いられるのか, 字義通りの意味で用いられるのかを区別する決め手となるコロケーションや文法的構造などを発見することができた. 問題点としては, 現有のアーカイブやコーパスではアメリカ英語の用法を十分にカバーしているとは計えず, データの補強を検討する必要があることが明らかになった.
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