研究概要 |
本研究の目的は,1、Langacker(1999)において提案されているプレーンモデルやLangacker(1993)において提案されている参照点構造モデルを発展させた多次元事態認知モデルを提案し、これを用いて日英語の文法現象を解明することにある。本研究で多次元事態認知モデルの必要性を主張するのは、行為連鎖だけに着目した従来の研究スタンスでは様々な認知的要素を簡略化しすぎてしまい人間に本質的な複合的な認知作用を正しく捉えることができないと考えるからである。 本年度は特に日本語のラレル構文にみられる事態把握のメカニズムの解明を中心に研究を行った。この研究成果は、日本言語学会第140回大会において「主観的状況と日本語受身文」と題して、また、日本英文学会第62回中部支部大会終了後ワークショップ『主観性から見る言語分析の展望』においても「ステージモデル再考-主体的把握と事態内視点-」と題して公表され、現在印刷中の『形式と意味のはざま』に「日本語ラレル構文の形式と意味-認知文法からのアプローチ-」と題して刊行される予定である。これらの一連の研究で明らかにしたことは、人間が事態を把握する際に事態内視点と事態外視点という二つのモードを多元的に用いているということであり、特にこの事態内視点を用いることで、日本語のラレル構文の多義性が正しく捉えられるようになるということである。また、英語の属性叙述文の分析にプレーンモデルを援用した研究(「事態把握の類型-属性叙述文の認知図式化に関する提案-」)が『英語研究の次世代に向けて-秋元実治教授定年退職記念論文集-』(吉波弘、他(共編))において公刊された。
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