本研究では、日本語母語話者と日本語学習者(台湾人学習者及び韓国人学習者)による日本語意見文の特徴を主にモダリティ表現(書き手の心的態度)の観点から分析し、アカデミックライティングにつながる作文指導の指針を示すこと、研究者が分析に有用できる作文のデータベースを整備し公開することを目的としている。最終年度に当たる平成22年度は、以下のように研究を進めた。 1データベースの最終整備と公開の準備 これまでMicrosoft Excelによるデータベースの作成を進めてきたが、汎用性を考慮し、個別の作文のPDFファイル及びテキストファイルもデータベースに追加することとした。並行して、これまでのデータに入力ミスがないか、再度チェックも行った。また、完成したデータベースを公開するためのホームページを立ち上げ、効果的なデータ公開の方法について検討した。 2データベースを用いた研究の遂行 昨年度に引き続き、データベースを利用して「譲歩構造」及び「『中級日本語』で導入するモダリティ表現」、「主張の述べ方」に関する分析を行い、研究成果を発表した。 この4年間で、日本語の意見文(日本134編、台湾57編、韓国55編)及びその母語訳を収集し、多くの研究者の利用に供することが可能な形で整備できたこと、作成したデータベースを用いて複数の観点から分析を行い、主に日本語学習者への文章表現指導に提言ができたことは、本研究の成果と言えるだろう。研究成果の蓄積という観点からも、分析結果の発表だけでなく、分析に利用したデータも併せて公開していくことが、当該分野の研究の発展にとって重要な貢献となりうると考える。
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