研究概要 |
2007年度は,製造業に従事するブラジル人労働者(=異文化構成員)と日本人労働者に対する聞き取り調査のデータを文字起こしし,a)日々のコミュニケーションを通して,外国人労働者が組織の行動規範に気づき受け入れていく過程,b)外国人労働者が組織に入ることにより,日本人労働者の組織の行動規範の見方へどのような影響があるか,c)外国人労働者が存在する組織のコミュニケーションの特徴と問題点に注目しラベルをつけ,分析作業を行った。ひきつづきデータを増やし,分析作業を続けている。現段階で明らかになったこととして,情報を得るという観点からは,日本語能力が低いブラジル人労働者は,日本語能力の高いブラジル人労働者や通訳者を媒介者としてメッセージを受け取れることから,理解を阻害されるとは言い切れないということが明らかになった。その反面,日本語能力が低いブラジル人労働者は,日本語でのコミュニケーションに困難が伴うことが,日本人社員からマイナス評価を受ける要因であることを知ると,彼らとのコミュニケーションを心理的に避けるようになるということも判明した。また,日本人社員も外国人労働者の日本語能力によって,コミュニケーションの相手を選択している状況があった。このようなコミュニケーション経路の制限が,結果としてブラジル人労働者が独自にルールを形成する要因になっているのではないかと考えられる。
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