平成20年度は、前年度収集したデータをもとに、三つの調査を行い、その成果の発表を行った。 第一に、留学生と日本人学生の異文化間会話において、留学生のどの行動が日本人学生に好意的・非好意的に評価されるか、反対に日本人学生のどの行動が留学生に好意的・非好意的に評価されるかを調べた。具体的には、異文化間会話に参加した留学生と日本人学生を対象にフォローアップインタービューを行い、そのインタビューでの発言を内容分析した。 第二に、留学生の日本語口頭能力の差により会話行動がどう異なるのか、そしてそれが日本人学生にどう評価されるかを調べた。当初の予定では、友人作りに成功している留学生と、そうではない留学生の会話行動を比較することになっていた。しかし、友人の有無よりも日本語口頭能力の差による会話行動の異なりと日本人学生の評価への影響のほうが、今後の教育への応用という点で早急にとりくむべき課題と考えたため、研究計画を変更した。会話の詳細な観察を通して、中級者、上級者それぞれのグループ間の異なりを明らかにし、さらに第一の調査で行った 第三に、留学生と日本人学生の会話を、日本人学生同士の会話と比べ、日本人学生の側が留学生相手の接触場面であることを意識し、どう会話行動を調整しているのかを調査した。具体的には、日本人学生の情報要求行動と、それに続く発話連鎖に焦点を当てた分析を行い、会話の特徴の違いを明らかにした。 本研究により、異文化間会話の特徴の一側面と、留学生と日本人学生のそれぞれが相手のどんな会話行動を好意的・非好意的に評価するかを明らかにすることができた。また留学生の日本語口頭能力レベルによる評価の違いについても明らかにすることができた。今後は、これらの研究結果をどう教育へ応用するかを検討していく。
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