本年度は次の研究を行った。 (1)文献研究 ・日本国内(国および地方自治体)と海外(オーストラリア)における言語教育政策において、定住型JSL(またはESL)生徒に対する支援がどのように位置づけられているかを検討した。オーストラリアに関しては、ESL教育、リテラシー教育、アボリジニに対する教育、学習障害の子どもに対する教育など、関連領域の言語教育政策も収集した。 (2)事例研究 (ア)平成19年度から3年間にわたって定住型JSL生徒Xに対して日本語教育実践を行ってきた。本年度は、Xとその家族に対する聞き取り調査を行った。その結果、定住型JSL生徒がことばを発達させる上で、次の点が重要であったことが明らかになった。(1)より多くの大人と接し、ことばを使った関わりをもつ経験。(2)生徒の背景や力を理解し受け入れた上で、できないことよりもできることをほめて励ます教員の関わり方。(3)友人関係の広がり。(4)自分の気持ちや考えをことばで表現する機会。(5)自信を持つ経験。(6)生徒にとって意味があり、興味がある内容や経験とことばを結びつける経験。 (イ)東京都内の定住型JSL生徒に日本語教育実践を行っている実践者(研究協力者)2名から、実践事例を聴き取り、定住型JSL生徒が抱える問題、彼らに対する日本語教育実践の工夫などを調査した。 (3)研究成果の発表:(2)事例研究(ア)の成果を研究会にて口頭発表した。さらに分析を進め、平成23年度中にはより詳細な研究成果を発表する計画である。
|