[目的]:本研究は、日本語学習者を対象とした実験を通して、動詞活用の習得における項目学習(item-learning)と規則の学習(rule-learning)の関係について考察し、効果的な日本語教育のあり方を検討することを目的とする。 [平成19年度の実績](3年間のプロジェクトの1年目) (1)先行研究の知見のまとめ:国内外の第二言語習得研究をもとに、項目学習と規則の学習との関連を考察した。 (2)文法性判断テストの分析:日本国内の学習者(n=61)を対象にした文法性判断テストを分析し、日本語学習者が生産的にテンス・アスペクト形態素(ル、タ、テイル、テイタ)の使い分けができるかどうかについて検討した。その結果、日本語能力の下位群は、個々の動詞を特定のテンス・アスペクト形態素と結びつけやすいことが明らかになった。一方、上位群は、ほとんどの動詞でコンテクストに合わせ適切なテンス・アスペクト形式を選択できるようになっていた。 (3)コーパスデータと文法性判断テストの比較:『現代日本語書き言葉均衡コーパス』(デモンストレーション版)を用いて、各動詞のテンス・アスペクト形態素の使用頻度と(2)の文法性判断テストの結果との比較を行った。その結果、日本語能力の下位群でテイルの選択率にコーパス頻度との相関が見られることがわかった。 (4)研究成果の発表:(1)(2)の成果は、UWM Linguistic Symposium on Formulaic Languageにて口頭発表を行った。また、現在は、その際に得たコメントを踏まえ、(3)のコーパス分析の結果を加えて論文の改稿を進めている。
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