1. タイ語、ベトナム語母語話者の日本語長音知覚についての縦断調査 本年は、タイ語戸ベトナム語母語話者の日本語学習者に対し、日本語長音知覚実験を縦断的に行った。ベトナム語母語話者に対しては、2008年1月に調査した被験者に対し、2008年12月に二回目の調査を行った。タイ語母語話者に対しては、新たにスアンスナンタ・ラチャパット大日本語学科の学生を対象とし、2008年8月に1回目の調査を、2009年1月に2回目の調査を行った。調査項目は、1)長音知覚同定実験、2)長音知覚弁別実験、3)日本語能力測定試験の3つである。二つの被験者集団は学習暦及び学習環境が類似しているため、母語の音韻体系の影響を調べるのに適したデータが得られた。また、タイの学習者に対しては、日本語の長音学習についての意識を問うアンケート調査も実施した。縦断調査の結果は、現在整理中である。 2. 学会発表 ベトナム語およびタイ語母語話者に対する1回目の知覚同定実験の結果を、2008年12月に行われた第二言語習得研究会で発表した。この発表では、1)タイ語とベトナム語の母語話者の知覚パターンが明らかに異なること、2)タイ語母語話者による長音の知覚境界値は、ベトナム語話者と比べ有意に短いこと、3)タイ語母語話者の知覚パターンは、日本語母語話者とも異なること、等の事実から、日本語の長音知覚には母語の音韻体系の影響があると見られるが、長音を有する言語の母語話者にとって日本語の長音知覚は必ずしも容易ではないと結論づけた。
|